大田区大森・山王の鍼灸院、りゅうしん堂では
腹痛をどうみるのか
東洋医学と西洋医学の視点を織り交ぜながら
ご紹介します。

腹痛

腹痛とは?

腹痛とは腹部に感じる痛みの総称のことをいいます。

消化器系に由来するものが多いですが、腎・泌尿器、血管系、女性生殖器、全身疾患、さらには心因性によるものまで原因は幅広く存在します。

腹痛

腹痛一例

・胃腸の炎症
・胃酸による刺激
・腸の運動の異常
・便秘や下痢
・腸内のガス
・ストレスや自律神経の変化
・内臓疾患によるもの
・生理痛によるもの など

特に鍼灸施術との関連が期待されているのが、内臓そのものに大きな異常がないのに腹痛が起こるものになります。
ここでは代表的な2つをご紹介します。

過敏性腸症候群(IBS)

過敏性腸症候群(IBS)とは、特に消化器の疾患がないにも関わらず、慢性的な腹痛と便秘や下痢をに繰り返す病気になります。
主にストレスや抑うつ、不安や恐怖などの心理的要因、自律神経の失調などが原因と考えられています。

機能性ディスペプシア(FD)

がんや胃潰瘍などの目に見える異常が見つからないにもかかわらず、みぞおちの痛みや胃もたれといった胃の不調が慢性的に続くもののことをいいます。
原因として、胃の運動機能異常や、胃酸過多、胃の知覚過敏、ストレス、ヘリコバクター・ピロリへの感染などが考えられていますがまだはっきりとはわかっていません。

※生理痛で起こる腹痛などについてはこちらでご紹介しています。

腹痛に対する鍼灸施術のエビデンス

腹痛の対する鍼灸の研究でも過敏性腸症候群(IBS)や機能性ディスペプシア(FD)に関するものが比較的多くみられます。

①過敏性腸症候群(IBS)

2025年のACTION試験(280名の多施設偽鍼対照試験)で、下痢型過敏性腸症候群に対する鍼施術の特異的効果(プラセボを超える効果)が確認されています。
週3回、6~8週間行った研究で効果は第3週から有意差が出現し、18週間にわたり持続しました。

また、2026年に公表されたベイジアンネットワークメタアナリシス(1,839名、12件のランダム化比較試験)では、鍼施術および灸施術は通常薬物療法と比較して症状重症度の軽減と生活の質改善に有効であることが示されました。
特に灸施術の症状軽減効果が高かったと報告されています。

②機能性ディスペプシア(FD)

2024年のベイズ統計を用いたメタ解析では、機能性ディスペプシア(FD)に対するさまざまな鍼施術について検討され、鍼灸と通常の西洋医学的治療を組み合わせることで症状改善に有利な可能性が示されています。
とくに心窩部の痛みには鍼灸+温灸、食後の膨満感には温鍼灸が最も有効とされ、症状によってアプローチを変えることが重要になります。

また、2026年に公表された最新のシステマティックレビュー・メタアナリシス(2,454名、23件のランダム化比較試験)では、シャム鍼(偽鍼)と比較して、鍼施術は高〜中程度の確実性で機能性ディスペプシア(FD)の症状やQOLを改善する可能性が示されました。

腹痛に対する鍼灸施術のメカニズム

腹痛に対して鍼灸施術が影響を及ぼす機序としていくつかの作用が考えられています。

①止痛効果

鍼施術を行うと皮膚や筋肉にある感覚神経が刺激され、その情報は脊髄を通り脳へ伝わります。
研究では脳へ伝わった鍼刺激によって、 内因性オピオイドやセロトニン、ノルアドレナリンといった痛みの調節に関係する物質や神経系が変化する可能性が報告されています。

②自律神経の調節

胃や腸の動きは自律神経の働きによって調節されています。
研究では鍼刺激によって身体から脳へ感覚情報が伝わり、迷走神経や交感神経などの自律神経系が変化、消化管の運動に影響すると考えられています。

③内臓知覚過敏の抑制

内臓知覚過敏とは通常なら腸が少し動いたくらいの刺激を、お腹が痛いと強く感じてしまうことをいいます。
これは腸管粘膜に炎症が起きている、または腸から脳へ送られる感覚情報が過敏になっていることが原因といわれています。
鍼灸施術を行うことで炎症の抑制、過敏になった痛みの伝達経路を調整することが可能性と考えられています。

④脳ー腸相関

脳と腸は自律神経やホルモン、免疫系などを通じて常に情報交換をしており、密接につながっています。
機能性胃腸疾患を対象とした研究報告では鍼施術によって症状が改善するとともに、島皮質、前帯状皮質、前頭前野、視床など、痛みや内臓感覚、感情処理に関係する脳領域の活動・機能的結合が変化する可能性が報告されています。
つまり、ストレスなどによる腹痛改善にも効果が期待できます。


ここからは、上腹部痛(おへそより上の痛み)と下腹部痛(おへそより下の痛み)に分けて、東洋医学でよくみられるタイプをご紹介していきます。

上腹部痛の5タイプ

東洋医学でよくみられる上腹部痛には次の5タイプがあります。

①寒邪犯胃(かんじゃはんい)タイプ

冷えが胃に影響することで腹痛が起こるタイプ。

✅急に強い痛みが出る

✅冷えると悪化する、温めると軽くなる

✅お腹を押されると嫌な感じがする

などの特徴があります。

冷たい風に当たる(寒邪)または、冷たい飲み物の飲み過ぎでお腹が冷えると起こりやすくなります。

②肝胃不和(かんいふわ)タイプ

肝の気が滞り、それが胃に影響することで腹痛が起こるタイプ。

✅張ったような痛みがある

✅ストレスで悪化する

✅ゲップが多い

✅胃酸が上がってくる(呑酸)

などの特徴があります。

ストレスなど感情の乱れ(情志の失調)がある人によくみられます。

③胃陰虚(いいんきょ)タイプ

胃の陰液(胃の潤い)が不足し、腹痛が起こるタイプ。

✅シクシクとした痛みがある

✅熱感を伴う

✅空腹感はあるがあまり食べられない

✅便秘になりやすい

などの特徴があります。

長引く病気などで身体を潤す力が減少している人によくみられます。

④脾胃虚寒(ひいきょかん)タイプ

胃を温める力が減少し腹痛が起こるタイプ。

✅我慢できるくらいのはっきりしない痛みがある

✅冷えを伴う

✅冷えで悪化する、温めると軽くなる

✅お腹を押されると心地いい

などの特徴があります。

過労や偏った食生活で胃腸が弱っている人によくみられます。

⑤食滞胃脘(しょくたいいかん)タイプ

胃に食物が停滞して腹痛が起こるタイプ。

✅張ったような痛みがある

✅ゲップが出やすい

✅吐くと楽になる

✅お腹を押されると嫌な感じがする

などの特徴があります。

食べ過ぎや不規則な食事によって起こりやすくなります。

下腹部痛の5タイプ

東洋医学でよくみられる下腹部痛には次の5タイプがあります。

① 寒凝肝脈(かんぎょうかんみゃく)タイプ

肝経の気血の流れが妨げられることによって腹痛が起こるタイプ。

✅引きつれるような強い痛み

✅冷えで悪化、温めると軽くなる

✅お腹が押されると嫌な感じがする

✅足も冷えやすい

などの特徴があります。

冷たい風(寒邪)に当たるなどで下腹部を通る経絡が冷えると起こりやすくなります。

②大腸湿熱(だいちょうしつねつ)タイプ

大腸に湿熱が溜まることで腹痛が起こるタイプ。

✅下腹部の脇に痛みが出やすい

✅便意はあるのに出にくい(裏急後重)

✅お腹を押されると嫌な感じがする

✅肛門に灼熱感をおぼえる

などの特徴があります。

辛いものや脂っこい物などの偏った食生活をしている人によくみられます。

③膀胱湿熱(ぼうこうしつねつ)タイプ

膀胱に湿熱が溜まることで腹痛が起こるタイプ。

✅下腹部の中央に痛みが出やすい

✅急に痛みが出る

✅排尿回数が多いが一回の量は少ない

✅残尿感がある

などの特徴があります。

高温高湿環境に長くいる、偏った食生活などがあると起こりやすくなります。

④肝鬱気滞(かんうつきたい)タイプ

肝の機能が失調することで下腹部の気が滞り腹痛起こるタイプ。

✅下腹部から陰部に痛みが広がることがある

✅膨満感や張ったような痛みが出る

✅ストレスで悪化する

✅イライラしやすくなる

などの特徴があります。

ストレスや感情の乱れでが原因で起こりやすくなります。

⑤腎陽虚(じんようきょ)タイプ

気血が損傷し陽気が不足、下腹部を温める力が弱くなることで腹痛が起こるタイプ。

✅冷えを伴う鈍い痛みがある

✅冷えると悪化し、温めると楽になる

✅お腹を押されると心地いい

✅寒がり

などの特徴があります。

過労や長引く病気などがあると起こりやすくなります。

上腹部痛のツボ

上腹部痛全般に使う基本のツボとタイプ別のツボをご紹介します。

○基本のツボ

中脘、足三里など。
→上腹部(胃の位置)にあるツボの中脘、胃経にあり胃のツボとして一番有名な足三里などが基本のツボになります。

上腹部痛のツボ

○タイプ別のツボ

上記のツボにそれぞれのタイプに関連するツボを合わせていきます。

①寒邪犯胃タイプ

胃兪、上脘など。
→上腹部の冷えを取る、お灸がおすすめ。

②肝胃不和タイプ

太衝、肝兪など。
→肝に関わるツボでストレスを緩和する。

③胃陰虚タイプ

曲池、三陰交など。
→熱を取り潤いを補う。

④脾胃虚寒タイプ

脾兪、胃兪など。
→脾胃に関わるツボで胃腸を強める。

⑤食滞胃脘タイプ

 内関など。
→消化を助けるツボを組み合わせる。


※使うツボはあくまで一例であり患者さんそれぞれの状態によって変えていきます。

下腹部痛のツボ

下腹部痛全般に使う基本のツボとタイプ別のツボをご紹介します。

○基本のツボ

天枢、関元など。
→下腹部にあるツボをメインに使います。

下腹部痛のツボ

○タイプ別のツボ

上記のツボにそれぞれのタイプに関連するツボを合わせていきます。

①寒凝肝脈タイプ

三陰交、大敦など。
→ 肝や血に関連するツボで下腹部を温める、お灸がおすすめ。


②大腸湿熱タイプ

曲池、上巨虚など。
→大腸の熱を取る。

③膀胱湿熱タイプ

中極、膀胱兪など。
→膀胱の熱を取る。

④肝鬱気滞タイプ

太衝、合谷など。
→肝に関連するツボで気の流れを整える。

⑤腎陽虚タイプ

 太渓、腎兪など。
→腎のツボを使い下腹部を強める。



※使うツボはあくまで一例であり患者さんそれぞれの状態によって変えていきます。

腹痛のセルフケア

腹痛のセルフケアを3つご紹介します。

①お腹を冷やさないようにする

寒邪犯胃タイプや寒凝肝脈タイプなどは冷えると悪化し、温めると軽くなる特徴があります。

腹巻きや温かい飲み物などでお腹を守りましょう。

②ストレスを溜めない

肝胃不和タイプや肝鬱気滞タイプなどは、ストレスにより腹痛が起こります。

ストレスを避ける、または軽い運動や趣味でストレス発散がおすすめです。

③暴飲暴食、偏食を避ける

栄養が偏ったり、暴飲暴食をすることで胃陰虚タイプや大腸湿熱タイプになりやすくなります。

腹八分目、食事のバランスや量に気をつけましょう。

⚠️こんな時は病院へ

急な激しい腹痛、なかなか治らない腹痛など、いつもと違う感じがした時はまずは病院への受診をおすすめしています。

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