大田区大森・山王の鍼灸院、りゅうしん堂では
更年期障害をどうみるのか
東洋医学と西洋医学の視点を織り交ぜながら
ご紹介します。
閉経前後5年間ぐらいの期間(45〜55歳ごろ)のことを更年期といいます。
この間に生じる不定愁訴を更年期症状といい、日常生活に支障をきたすようになると更年期障害となります。
更年期障害の詳細についてはまだ不明なことも多くありますが、内分泌的因子、心理・性格的因子、社会・文化的因子の3つの要素の関与が指摘されています。
内分泌的因子としては、卵巣機能の低下により女性ホルモンであるエストロゲンの急激な減少があげられます。
心理・性格的因子、社会・文化的因子としては、更年期の頃は子どもの進学や就職、親との死別など女性を取り巻く環境に変化が起こりやすい時期であり、心理的ストレスがかかりやすいことが更年期障害の発生に関わってくると考えられています。
更年期障害の主な症状としては、ほてり(ホットフラッシュ)、のぼせ、発汗、イライラ、気分の落ち込み、めまい、頭痛、肩こり、疲労感などがあり、各因子による自律神経の乱れが大きく関わっているといわれています。
東洋医学では絶経前後諸症と呼ばれているものが、更年期障害と近い症状になり、腎の陰陽失調が原因で起こりやすいといわれています。
更年期障害では様々な症状がありますが、その中で多くみられるホットフラッシュについていくつかの研究が報告されています。
鍼施術と施術なしとを比較した研究では、鍼施術の方が有効であるとの報告がありました。
しかし、プラセボ鍼(刺入しない鍼)やシャム鍼(ツボ以外に刺す鍼)との比較、ホルモン療法など他の療法との比較では、差がみられるものとみられないものの両方の報告があります。
つまり、鍼施術を行わないより鍼施術を行った方が良いですが、他の療法と比べて鍼施術の方が有効とは言い切れないのが現状です。
更年期障害の症状であるホットフラッシュに対して鍼灸が効くメカニズムにはいくつかの機序が想定されています。
ホットフラッシュの発症に関しては、視床下部の体温中枢における黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)を原因とする中枢モデルと、強力な末梢血管拡張作用を持つカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を原因とする末梢モデルの2つの説があります。
卵巣機能が低下するとエストロゲンが減少→ LH-RHの分泌が亢進→随伴する体温調節中枢が刺激されセットポイントが低下、またIL-8炎症性サイトカインが産生させる→ 皮膚血管の拡張、異常な発汗が生じホットフラッシュが起こる
卵巣機能が低下するとエストロゲンが減少→血中エストロゲンの低下で血中CGRPが減少する→血管の拡張反応が低下→本来の血管反応を維持しようとしてCGRP受容体が増加しCGRPに対する感受性が高まる→CGRP誘発性皮膚温上昇が生じホットフラッシュが起こる
鍼灸施術ではエストロゲンを直接増加させることはできません。
しかし、IL-8産生に対する抑制作用、CGRP感受性に対する抑制作用があるとされており、この作用がホットフラッシュに鍼灸が効くメカニズムと考えられています。
更年期障害では次の2つのタイプがよくみられます。
閉経期に腎精が消耗し、腎陰が不足した状態になることで起こるタイプ。
✅月経が早まる
✅のぼせやすい
✅手足がほてる
✅寝汗をかきやすい
などの特徴があります。
多産や房事(性交)過多、睡眠不足などがあると起こりやすくなります。
身体の熱を抑えられず、心や肝にも影響し、不眠や動悸、イライラなどの症状が出てくることもあります。
閉経期に腎気が衰え、腎陽が不足することで起こるタイプ。
✅月経量が多くなる
✅手足の冷えを感じる
✅足腰のだるさがある
✅むくみやすい
などの特徴があります。
もともと陽虚体質(冷え症など)がある人、冷たい食べ物の偏食、寒い環境に長くいることで起こりやすくなります。
冷えが胃腸に影響し、食欲不振やお通じが緩くなるなどの症状が出てくることもあります。
更年期障害全般に使うツボ(基本のツボ)とタイプ別のツボがあります。
太渓、腎兪など。
→閉経期で腎精や腎気が減少しているため、腎を強めるツボをメインに使います。
基本のツボに合わせ、それぞれのタイプ別のツボを使います。
復留など。
→腎陰を補う。
関元など。
→腎陽を補う。
※使うツボはあくまで一例であり患者さんそれぞれの状態によって変えていきます。
更年期障害のセルフケアを2つご紹介します。
腎陰虚タイプの場合は体の潤いが不足しています。
水分をこまめに摂る、塩分や辛味が強い食べのもを摂りすぎないようにしましょう。
腎陽虚タイプの場合は冷えが悪化の原因になります。
冷たい食べ物の摂りすぎに注意しましょう。
睡眠時間が少ない、質が低下すると症状が悪化しやすくなります。
更年期障害が強いときは十分な睡眠が取れているか、睡眠の質は悪くないか確認してみましょう。
参考:教科書検討小委員会著『新版 東洋医学臨床論』南江堂、2022年
川喜田健司、矢野忠著『鍼灸臨床最新科学』医歯薬出版株式会社、2014年
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